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スティーブ・マックイーンとデータセンター

池上通信機 事業プロモーション室 (放送担当) 今成 歩

私は自他共に認める平和主義者なのだが、「カーキ色」が大好きだ。「カーキ色」は定義の微妙な色で、「アーミーグリーン」「セージグリーン」「オリーブドラブ」など、実は多種多様な色目であるものの、総じて「漢気(おとこぎ)の緑色」を想像して頂きたい。

そう、ベストヒットUSAで育ち、バブルの時代に「アメカジ」の洗礼を浴びた我々の世代は、MA-1と呼ばれる米軍のフライトジャケットにきっと一度は袖を通したであろうし、長じて往年の名画「大脱走」のスティーブ・マックイーンに「なりたい」と一度は夢見た「男のロマン」世代なのだ。(余談だが、「半沢直樹」の世代は少し上になる)

そんなカーキ色大好きの私も、4月からのテレワークで自慢のカーキグッズで現場を颯爽と歩く機会も無く、悶々としていたところに、ついに来た千載一遇のチャンス、それが昨日の「データセンター機器実装」だったのだ。

止せばいいのについつい買ってしまった新調の「HBT (ヘリンボーン・ツイル)」カーキ色、ミリタリー風パンツを身に付け、久しぶりに電車に乗って件のデータセンターに向かう途中、車窓に映った自分の姿を見て「流石にちょっとコスプレ入ってないか…?」と少し不安になって、iPadで一生懸命勉強している風だった女子高生の視線を意識したりしながら「現場」に向かったのである。

生まれて初めて足を踏み入れたデータセンターは、「現場」と言えば、ケーブル作製時の被覆の山にまみれる工場や、焼きそばパンをかじりながら一心不乱に電子台本の追い込みをする報道フロアとは全く別次元の、正に「機能そのもの」という風情で「無機質」とすら感じさせる、ある種の威圧感を持って私を迎え入れたものだ。

しかしながら、実際の作業は、4人の男達で寄ってたかって「棚板」をラックにネジ止めしたり、空調の爆音の中、ケーブルを通線穴から二人で手繰り寄せたり、あの「漢気(おとこぎ)の空気感」にあふれ、帰宅して眠る頃には筋肉痛になっていた。

「放送IP化はクラウドを目指す」この分野に携わっていれば誰もが感じる命題だが、実際のデータセンターでも、クラウドの機能を提供する為に「オンプレミスのベタな作業」は不可欠な訳で、その「オンプレミスのベタな作業」は、私自身にとても親近感のある「怒涛の漢気(おとこぎ)作業」でもあったのだ。

これまでなかなかIP化の進まなかった放送業界も、いよいよその荒波を真正面から受ける、そんな時代に私達は立ち会っているのかも知れないと思う。そんな時代に、「データセンターに居たよ、スティーブ・マックイーン」と、スマート世代の語り草になる、そんなオヤジに私はなりたい。(了)